海と島と人間と・・・・旅が好き!


by Satoe-Umeda
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9回目

声をかけるのをためらっている私に金子さんはようやく気づかれ、「あ、元気」と、今までの苦渋に満ちた表情はふいと、かき消され、はにかんでいるようなおおらかな笑顔を向けられました。
その明暗の激しい入れ替わり・
すごい人だと身震いしました。
金子さんは晩年、エロ話のうまいフーテン老人のようにマスコミに扱われて、飄逸というか、洒脱というか面白いトリックスターのような扱われかたをして、若い人達にも、ヒッピーの元祖みたいに思われ、それはそれで金子さんの一つの表情ではありますが、その下には寂しげな悲哀に満ちた、もう一つの表情が隠されていて、そして、これこそが金子さんの本当の素顔ではなかったかと私は思うのです。
そういう金子さんが私は、好きでした。

おおよそのところ、金子さんの素顔を中心にお話したのですが、後は折に触れ読んだ金子さんの書かれたものの中から、私の生き方というか、根っことなって根ついてしまった言葉の、ほんの6つほどを、拾いだしてお話したいと思います。

「理想は悲劇だ」
これはどこかで読んだ言葉でしたか。
どきりとしました。
金子さんは集団とか組織つまり「穴ぼこ」に入ることを徹底して嫌いました。「穴ぼこ」にはいれば、それが小さな穴ぼこでも、そこには政治性が生まれ、なんらかの正義なり理想が目指される。そのために気を揃えなくてはならない。
そういうことが人間をどんなに駄目にしているか。
人間はまず個人である。
その個人の考えを自由を、つまり「自分」を徹底して大事にする。
戦前、戦争中に書かれた「鮫」「おっとせい」などのいわゆる戦争抵抗詩、反戦詩と呼ばれたものも、なにかの政治的イデオロギーで書いたわけではなく、あくまでも自分の個を圧迫し、自分の自由を奪うものに、本能的に、生理的にほとんど、衝動的に抵抗したわけで、金子さんはそおいう意味で、徹底して自分の本能、生理に忠実だった。
誰がなんといっても嫌なものは嫌。嫌いなものは嫌い。好きなものは好き。そおいう我儘をとおしたひとだった。エゴイスト、我儘というと、なにか悪いことのように言われますが、集団の中で我がままを通すことほど難しいことはないのです。日本という国は、その点で、いざと言うときにはまず「個」が我慢することを強いる国なんです。
戦後民主主義とかなんとかいいながら、土壇場にくると、全体の方を大切にする。
金子さんは子供の頃、ツッパリで登校拒否児でしたが、あれから学校教育の本質は全然変わっていない。集団に従わない者は「協調性」がないという発想です。
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by satoe-umeda | 2008-01-12 15:28